LOGIN南地区
黒いヒビ割れの悪魔が言った通り、この地区にも悪魔がいた。 その中でも黒いスーツを着たスマートな体型の悪魔は騎士団の攻撃を喰らっても倒れることはなく、街を容赦なく破壊していく。 「くそっ!もっと魔砲弾を撃てー!」 「だめです!もう弾が残り少ない!」 「くそっ!こんな時に12騎士長の1から9長は他の国に出張とは…エバルフとカレンはまだ戻ってこないのか!?」 「それが…未だに連絡が取れません!」 「くそっ!仕方がない!俺がやってやる!」 先陣を切って前に出たのはエバルフとカレンと同じ称号を持つ男。 11騎士長(イレブン・ナイツ) サージス・デルモンテ 見た目は黒髪に白髪が生えかかった40手前の男だが体力が自慢の筋肉質な男だ。 「11騎士長!1人で大丈夫でしょうか!?」 「お前らが出てきたら邪魔だ!砲撃手以外の騎士は周りの雑魚共をやれ!俺はあの黒スーツの悪魔をやる!」 サージスは他の騎士達に指示を与え、自分は黒スーツの悪魔の悪魔の方へと行った。 「1人でいいとは随分余裕だな。」 「ふんっ!俺は何年も騎士団やってきた男だ!お前みたいな貧弱な悪魔一捻りにしてくれるわ!」 サージスは手から自分の武器である1m?程ある巨大なサーベルを出した。 「まあいい。俺はこの国を潰す事が目的だが暇つぶしついでにお前と遊んでやるよ。」 「遊んでられる余裕があればなっ!」 サージスはサーベルを縦に振るとその威力で地面が割れた。 悪魔はそれをジャンプでかわし、空中に浮いた状態でその威力を見た。 「なるほど、身体能力を上げる魔法か。確かに人間にしては筋力だけはある様だな。」 悪魔は浮いた状態から一気に急降下し、サージスの胸に向かって鋭い槍状の魔力の塊を投げつけた。 「筋力だけと思うな悪魔め!」 そう言ってサージスは地面を蹴ると、その勢いで空を飛び上がった。 飛んでる最中に魔力の槍をサーベルではじいて避け、そのままの勢いで悪魔を斬りつけようとする。 しかし、黒スーツの男は浮いた状態で体を回旋させながらサーベルをかわす。 「ちっ!すばしっこい悪魔め!」 避けられたのが悔しいのかサージスは舌打ちをすると魔法でフワフワと落ちて地面に戻る。 「なるほど。とんでもない筋肉だな、地面を蹴るだけで空を飛べるとは。しかもそれとは別に魔法で体を軽くしてるんだな。」 「そうだ!だが、俺の実力はまだまだこんなもんじゃねえよ!」 「いや、君の実力は今見て大体わかった。単刀直入に言おう。今から俺と戦えばお前は5分位で死ぬだろう。」 「なっ…何だとっ…!?」 その瞬間、サージスが気付いた時には後ろにある建物の方まで飛ばされていた。 「ゲホッ…ゲホッ…いったい、何が起こった…全く見えなかったぞ…。」 一瞬でサージスが建物に飛ばされたのは悪魔が一瞬で空中から急降下し、サージスの腹を目に見えない速さで蹴り飛ばしたからである。 「この程度で見えなかったのか?まだ本気の10%も出してないが。」 「10%…だと?」 サージスは圧倒的な悪魔の力を見て本能的にこう感じた。 こいつはヤバイ、戦ったら確実に殺される。 「まずは手始めに、あなたをこの見通しの悪い建物と一緒に吹っ飛ばしましょうか。」 すると悪魔は手のひらから紫色に輝く魔力の塊を創り、それを徐々に拡大させた。 拡大した塊は直径2mほどの大きさになり、それをサージスにめがけて放出した。 ドカァァァァン!! その紫色の塊は放出されると共に更に拡大し紫色の衝撃へ変わると、目の前にある建物全てが吹き飛んだ。 サージスも衝撃に巻き込まれてしまい、建物と一緒に吹き飛ばされた。 「ふふ、久しぶりに力を解放した。やはり人間は全力の魔法で殺すのが1番だ。」 そして今度は更に紫色の塊を2、3個創り出した。 「よし、町をぶっ壊そうとするか。」 「させねえよ!」 すると遥か上空から壊したはずの建物の残骸が悪魔に向かって降ってきた。 降ってきた残骸はまるで隕石の様に降ってくるため悪魔はそのまま下敷きになった。 「はぁ、はぁ、恐ろしいやつだ。あの魔力の塊を複数出せるとは。」 遥か上空にいるのはサージスだった。 ザージスの魔法は自分と無機物全てを自由に浮かせることが出来る。 残骸が上空に浮いてたのはこのためだった。 「しかし、あの悪魔がこのままあっさりやられるとは思えねえな。ここでとどめを刺してやる。」 するとザージスは頭を下向け、足を上向けると空中を蹴る様にして地面に向かってに急降下した。 そしてサーベルを地面に向けて突き出すことで槍の様な体制にし、そのまま悪魔に向かった。 その速さはまるでジェット機が急降下する3倍の速さだった。 しかし、その時。 ボカァァァン!! 下敷きになったはずの悪魔が残骸を吹っ飛ばした。 そして落ちてくるサージスのサーベルを素手で掴み、そのまま片手で吹っ飛ばした。 「今のは結構痛かったぞ。なるほど、これは浮遊魔法だな。しかも残骸を浮かすほどの魔力はかなりのものだ。人間にしてはな。」 そう言うと悪魔はさっきまでの雰囲気とは別に、心身を押しつぶすような魔力を放出すると全身が筋肉質な黒い皮膚の化け物に変化した。 「ぐっ!なんだ!その姿は!?それにこの魔力は…」 ボキィッ! その直後、悪魔の蹴りがサージスの全身の骨を砕く音が聞こえた。 「ぎっ、ぐぁぁぁぁぁあ!!!」 ザージスは二、三秒ほど痛みを感じるのに時間がかかったが痛みを感知すると気が狂ったような悲鳴をあげた。 「まずはお前の12本の肋骨全てを折ってやった。これでお前は自由に動くことができない。」 そして今度は魔力で練り上げた剣を手に持ち、サージスを斬りつけた。 サージスは斬られた所から大量の血が吹き出てきた。 そんなことはお構いなしに悪魔は何度も何度もザージスの体を斬りつける。 「つまらねえな、この人間。もういいや。死ね。」 悪魔は面白くなくなったのか剣を今度は紫色の塊に変えた。 そしてそれを放出すると、サージスは南地区の半分の町と共に消滅した。 町の近くにいた悪魔や騎士達も破壊に巻き込まれたが生き残った者も何人か残っていた。 「おのれ…よくもザージスさんを!」 騎士達はサージスを殺した悪魔を睨みつけた。 しかし、悪魔はそれに動じることなく逆に笑いながら。 「フッ!何を怒ってる?人間はいつか死ぬんだ。俺はそれの後押しをしてやっただけだ。」 「後押し…だと?」 「そうだ!…ほらほら、俺の相手してたらお前らも後押しされる羽目になるぞ?」 騎士達の所には更に何十体もの悪魔が爪を伸ばしながら騎士達を襲おうとしていた。 悪魔は人間の心臓を食べる事で魔力が跳ね上がり、人間の負の感情で心が癒される。 殺す側の悪魔は人間に対しての感情はただの娯楽。 そして一方的な食事だった。 悪魔の何体かは人の心臓を食べて魔力が上がっているため、騎士達は苦戦していた。 そして1人2人と殺され、心臓を食われるものも出てきた。 「フフフッ。もう全滅も近いな。そろそろ俺もこの国を終わらせるとするか。」 そして悪魔は手のひらに紫色の塊を創ろうとした。 しかし、その時だった。「いつもありがとうね、リーナさん。」「いえいえ、私にはこれくらいの事しか出来ませんので。」カイルの家ではカイルの母親とミーナの母親であるリーナが、皆んなの食事を作って準備していた。クレーアタウンを悪魔に襲撃され、住む家が無くなったリーナは娘のミーナと一緒に居候させてもらっていた。(第34話参照)家族以外の人が増えるという事は家事をする者の負担が増えるという事だが、主婦としての家事スキルが高いリーナのお陰でカイルの母親は物凄く助かっていた。「リーナさんが居てくれるお陰で家事がだいぶ楽になったわ。」「それに、あなたが作る料理はどれも絶品で凄く美味しいからね。今日も頼りにしてるわよ!」「ありがとうございます、カルラさん。」カルラとはカイルの母親の名前である。2人はお互い歳が近い為、普段カイル達が居ない間に家事を早く済ませ、暇になってから色んな話に花を咲かせていた。確かにリーナの料理は作るもの全て絶品であったが、彼女は料理の腕をずっと磨き続けていた。その理由は、いつかアガレフが帰ってきた時に沢山料理を食べてもらう為であった。自分の料理が好きだと言ってくれた夫に、沢山自分の料理を食べてもらう為に。しかし、その願いは叶わなかったが今はその料理の腕が誰かの為に活かされており、それがリーナにとっても嬉しい事だった。そしてカイル達がノーム王のところから帰ってきた。「ただいま帰りました、母上!」カイルが帰ってきた為、玄関から自分が帰ってきたと伝える声が母達の居る部屋まで伝わってきた。廊下からバタバタと多くの足音が聞こえてくる。他にも一緒に暮らしているミーナとエミル、フィナ、ライク、ニケルも一緒に帰ってきたからだ。そして帰った6人は母たちの居る部屋にゾロゾロと入ってきた。「皆んなおかえりー!ご飯もう少しで出来るからね。」「ありがとうございます、カルラさん。私も手伝います。」「私もやります!」フィナが言うとエミルも便乗し、カルラ達の手伝いをしようとした。「ありがとうね。助かるわ、フィナさんにエミルちゃん。2人にはちょっとこのスープの味を見て良い感じに整えて欲しいの。」カルラは殆ど作っていたスープの最終調整をを2人に任せた。フィナとエミルは2人とも料理が得意である為、時間がある時などはカルラとリーナに手伝いを頼まれる事があった。しかし、
………ここは、どこだろう?気付いたらそこは真っ暗な空間にミーナはいた。「ここは…旅に出る前に見た夢の中みたい。夢の中のはずなのに夢じゃないみたいな…」そう。ここは初めてミーナが夢の中で優しい心を持つグレンと出会った場所であった。「ミーナ。」この声は?そう思ったミーナは声のする方を向いた。そこにはあの夢の中で初めて出会った黒髪のグレンが居た。「あなたは、あの時夢の中で会ったグレン?」そう質問すると、何故か黒髪のグレンは涙を流しながら言った。「…お願い…助けて欲しい。」そう言ってグレンは闇の中へと消えていく。「え、ちょっと待って!どこ行くの!…ねぇ!」ミーナは呼び止めたがグレンは何も言わずに消えていく。夢の中で走っていると何かにぶつかる様な衝撃が伝わった。「痛っ!」目の前で誰かにぶつかってしまったのか、ぶつけられた人は痛みを口にした。「…ハッ!…夢か……。」「…もぉ。夢か…じゃないわよ。何時だと思ってるの?」ミーナとぶつかったのは隣で寝ていたエミルであった。時刻は既に午前2時を過ぎており、起こされたエミルは滅茶苦茶不機嫌そうにミーナを睨みつけていた。「ご、ごめんねエミル。変な夢見てしまって…。」「もぉ……」そう言ってエミルは再び布団を被って眠りについた。「(今の夢、何だったんだろ?あの黒髪のグレンが現れたって事は、現実のグレンに何かあったんだろうか?)」「…ちょっと駄目だ…もう、眠い…。」少し考えたミーナであったが眠気には勝てなかった為、彼女もすぐに布団を被って眠りについた。ミーナ達はクレーアタウンでアスモディウスと戦ってから10日程の日が過ぎ去っていた。カイルはクレーアタウンで起きた悪魔との戦いで、カレンが悪魔サイドに居たことを西の大国イフリークの騎士団達に無線で伝えた。騎士団達の反応はそれぞれ違っていたが、全員悲しみに暮れていた。特にエバルフ。彼はカレンととても仲が良かった為、敵となったカレンを聞いて現実を受け止めきれずにいた。イフリークに残った12騎士長は5人4騎士長、ウェンディー・ソルディア5騎士長、シキ・ラインハルト6騎士長、エレンシー・ガーデン7騎士長、アレックス・マーベルそして12騎士長、エバルフ・シュロンこの5人はカイルから聞いたレミールに残った騎士長達の訃報を聞き、後日直接レミー
2人が見た通り、確かにヒスイはグロードを助けた。それは紛れもなくその場で起きた事実である。しかし、2人の記憶による事実と今こうして実際に起きたヒスイが刺された結果が矛盾している。何があったのか?それはベリエルの持つ虚無の魔眼の力が原因である。[あらゆる事象に対する再試行]これはその時に起こった場面を無かった事にし、再度その場面をやり直す事が出来る力。例えるなら、(殴られた→やり直し→殴られる前に戻る。)といった様に、実際起きた事を無かった事にし、起きる前に戻る事が出来る。言うなれば、時を巻き戻す力に近い力である。この力は虚無の魔眼を見せた相手にのみ発揮する。先程2人に虚無の魔眼を見せたのはこれを行う為であった。南の大国シルフで、カイルがハイド(ベリエル)に優勢だったがそれを一気に覆されたのも、この力が原因である。(第18話参照)そしてグロードが気がついた時にはヒスイは既にベリエルの黒い槍に突き刺されており、引き抜かれたと同時に後方へと倒れていく。「ヒスイ!!!!」ヒスイが倒れていく姿を見て叫ぶグロード。何故こうなったのか、考える余裕さえ無い。目の前で妻が刺された事に対する怒りがグロードの心を真っ赤に染め上げる。そしてグロードは空間移動でベリエルの元まで転移し、ベリエルの胸ぐらを掴む。「ぐっ!…」この時、何故かベリエルは虚無の魔眼を見せてこなかったが、この時はそんな事が気にならないくらい怒りの感情のみがグロードを突き動かしていた。怒りが爆発したグロードは胸ぐらを掴んで動けなくなったベリエルの顔面を拳で連打した。「うおおおおおお!!!!」ガスッ!ガスッ!ガスッ!ガスッ!……!何度殴っただろうか。何故か無抵抗のベリエルをグロードは怒りのままに殴り続けた。そして、右拳に魔力を込める。全属性を操れるグロードは、右拳に全属性の力を纏った。全属性とは、基本属性である8属性(火、水、風、雷、土、空間、光、闇)。これらを全て併用すると、相反する属性同士が互いを弾き合う。普通に使えば術者に影響が及ぶ危険な行為。しかしグロードは呪いにより死なない不死身の身体である為、その様なリスクが無い。無尽蔵に溢れ出る魔力を、右拳に纏った全属性の魔力へ更に加算する。魔力が増えれば弾き合う力も更に強化される。グロードはその強大すぎる力を全て、ベリ
ラウスが産まれてから5歳になった頃。未だグロードはベリエルを見つけられずにいた。その日は休日出勤で働きに出ていたヒスイの代わりに、グロードがラウスの世話をしていたのだった。「お父さん!」グロードの所まで走って近づくラウス。ラウスは髪色は母親譲りの綺麗な白銀であったが、顔はどちらかというと子供の頃のグロードに似て優しそうであった。「どうしたんだ、ラウス?」「この魔法書に書かれてるやつが分からないんだけど、教えて欲しい。」ラウスはどうやら魔法書を見ながら勉強しており、グロードは分からないところを教える為に一緒に見た。ーーこうしてると、ベリエルに勉強を教えてた頃を思い出す。一瞬ベリエルを思い出したが、すぐにその思い出を振り払った。「(いかん!ラウスはあいつとは違う!あいつはもう弟じゃ無い。憎むべき男なんだ。)」グロードは邪念を払う様にして、そう自分に言い聞かせた。「どうしたの?」「あっ…えっと、何でも無い!…ここが分からないんだな?」グロードはラウスが聞いてきた分からない部分を見て驚いた。「(…これは…高等魔法の専門書じゃ無いか。とても5歳が理解出来るレベルじゃ無いぞ。)」ラウスは魔法の理解力が異常に高く、それは紛れもなく10歳で実用性のある魔法を発明していったグロードの血筋であった。「ここはな、こうだから……。」噛み砕いて教えたつもりだがどうしても難しい専門用語を使う為、高校生でも理解が困難なレベルであった。しかし、ラウスは。「ありがとう!それだけ分からなかっただけだから!」 そう言ってラウスは専門書を持って部屋に戻って行った。ーーあの難解な本の一部分が分からなかっただけ?「…凄いな。流石は、俺の息子だな。」5歳にしては凄まじい魔法の才能を発揮するラウスに驚いていたが、自分の息子がこれ程の才能を持っている事に対して誇らしくなった。それから7歳になって少し身体が大きくなったラウスは体術の面でも凄まじい才能を発揮していた。「やああ!!」ラウスは殴る時に上記の様な子供っぽい掛け声を出すものの、それまでの動きが凄かった。グロードは手加減してるものの、まるで次に動き出す足の動きが見えているかの様にラウスは予測していた。その様子をヒスイはちゃんと見ていた。その夜、ラウスが寝静まった時にヒスイから話があった。「あの子、
月の遺跡から現れた古の化け物達が世界中を暴れ回った事により、多数の他国の人が亡くなったこの事件は世界中で瞬く間に広がった。現去流時(げざると)で生き返るのは、同じ種族の人間のみ。つまり、月の民が生き返った事により他国の人間は殺されて亡くなったままであった。これにより、今回の首謀者は今まで古の化け物達を野放しにし続けてきた月の民の責任だと言われ、これが更に月の民達への差別が助長される要因となった。この差別は風化される事が無く、時間と共に他国からの恨みばかりが募っていった。一方、古の化け物達を倒し世界の人々を救ったと持ち上げられたグロード。彼は世界の英雄として一躍有名人となった。沢山の人に賞賛され、感謝される日々。中にはグロードが古の化け物達を倒した事を記す為、絵物語を書きたいと懇願してきた絵師も居た。ーーもう、好きにしてくれ。投げやりに全てを受け入れるグロードは、ほとぼりが覚めるまで、人々の"英雄ごっこ"に付き合った。そして50年が経った頃には彼の事を知る者が死に去っていき、その頃にはもうグロードの事を英雄と呼ぶ者は居なくなっていた。50年も経てば時代の流れもそうだが、人々の価値観や文化も大きく変わっていく。しかし、変わらないものもあった。1つは月の民の差別。これはいつまで経っても、古の化け物達が世界中を暴れ回り、その生まれ変わりが現在の月の民だと後世に語り継がれていた。その為、実際古の化け物達が暴れた所を見た事がない後世の人々も、月の民が恐ろしい存在であるという価値観だけ植え付けられていた。そしてもう1つ変わらない事がある。これは50年経つ前から感じていた事だ。歳を取っていない。グロードは40歳の姿から変化が見られ無かったのだ。何故変化が無いのか?それはベリエルが掛けた呪いのせいであった。ベリエルはリオ王国の人達を超月食の日に自身の生命エネルギーに変換させ、それによってベリエルは不老不死となった。そんなベリエルに掛けられた呪いにはある条件があった。「この呪いは、術者が死ぬまで継続されるものである。」つまり、これはベリエルが死ぬまで呪いが解けないという事だ。不老不死になったベリエルは死なない為、呪いを掛けられたグロードとアガレフも必然的に不老不死となってしまった。これが、2人が400年間死ぬ事なく生き続けてきた理
それからもグロード、アガレフ、ベリエルは共にリオ王国で平和な日々を過ごしていった。グロードはあれから魔法の鍛錬を積んでいったが、時々月の遺跡へ出向いてアマルとサマスに修行を付けてもらう事が増えた。アガレフもグロードと一緒に月の遺跡へ出向き、修行を付けてもらっていたが彼には既に沢山の弟子が居た為、都合が合わない日が多かった。そしてベリエル。彼はこの頃になると部屋に閉じ篭もる事が増えた。理由は分からないが、何を聞いても調べ物をしてるだけだと言い、詳しい事はグロードとアガレフに教えようとしなかった。一度気になったグロードとアガレフはベリエルの部屋に行ってみた。扉の前でアガレフがグロードに言った。「ベリエルの奴、朝から部屋でずっと何かしてるみたいなんだが…どうも様子が変なんだ。」「ああ。確かに変だ。ベリエルがこの部屋に閉じ篭もってる間、一切の魔力を感じないからだ。」異変に気付いたのはグロードも同じであった。魔力を感じない。というよりも、まるでそこにベリエルが存在していない様に感じられた。気になったグロードはベリエルの部屋の扉をコンコンとノックした。数秒待っても反応は無く、静かなままであった。「…やはり様子が変だ。扉を開けるか?」「待て、アガレフ。流石に勝手に入るのは…。」すると目の前の扉がギィィッとゆっくり開く音が聞こえてくる。中からは相変わらずクマが酷いもののいつもの変わりない表情と姿、そして魔力のベリエルが出てきた。「…どうしたの、兄さん達?」何故か扉の前にグロードとアガレフが居た為、キョトンとした表情で2人を見ていたベリエル。「…いや、…何でもない。ずっと部屋に閉じ籠ってるから心配になってな。」「そ、そうだ。偶には、外に出て身体を動かしたらどうだ?」さっきまで魔力が感じられなかったベリエルはまるでそこに居ない様な気配であったが、突然その場に現れた様な気配に2人は驚く。しかし、一先ずベリエルに変わりがない事を確認して2人は安心した。「……んー、確かにそうだね。偶には身体を動かさないとね。…明日、久し振りに兄さん達に稽古を付けてもらおっかな!」グロードとアガレフにそう言われて頭を傾げ、少し考える様な間が気になるがすぐに笑顔になった。それを聞いたグロードとアガレフもベリエルに釣られて笑顔になった。「ああ。勿論だ。」「
ミーナ達3人が戦っていたその頃。東の大国で元八握剣(やつかのつるぎ)であったギンジはミーナの母であるリーナを連れながら、他にも生き残ってるであろうクレーアタウンの市民を探していた。生き残っていた市民は結構居た為、全員助けに来てくれたギンジの後ろをゾロゾロと歩いて着いて行く。そんな中で思わぬ人物に出会った。その人はギンジにとってあまり会いたく無い人物。「ギンジ!お前、こっちに来てたのか!?」の太く低い声の主である彼の名前はゴウシ。八握剣(やつかのつるぎ)の土刃(どじん)と呼ばれる男である。見た目年齢が30代後半は過ぎてるであろうゴウシは、ベリーショートの茶髪に整えられた茶髭。八
その頃。エミルとミーナはアスモディウス、操られた死者。そして悪魔となって現れたカレンを相手にしていた。すると遠くで砂の巨人兵が崩れていくのが見えるのが見えた。「え?あの悪魔祓いやられちゃったの?ちょっと待って、全然使えなかったじゃん!最悪!」一瞬でやられた悪魔祓いのアクィールスに対してキレるアスモディウス。「ー広がる水龍の陣。陣に入りし者を切り刻まんとする!」すると今度はエミルが水色の魔法陣を直径100mの広さに展開した。その陣に入っている敵と入ろうとしている敵に対して水の刃が飛び交った。水の刃は多数の死者の肉体を切り刻み、戦闘不能になる程のダメージを与える。しかし、この魔法
ドゴーン!!!突如、騎士団の本部から東に2km程離れた王宮の半分が突如半壊するのが見える。半壊した王宮の瓦礫は町中に雨の様に降り注ぎ、建物を次々に破壊していく。その光景をシルフの魔法騎士団達は見ていた。「バグーラ団長!…たった今、王宮の半分が何かの衝撃によって崩れた模様です!」「これは…ここまで力の差があったとは…フィナ様…。」祈る様に手を合わせる中、バグーラ団長に更なる報告が降り注ぐ。「バグーラ団長!更に王宮の方から何やら大勢の人影が見られます!」王宮の方を見ると横一列から大勢の人が並んでこちらに向かってくるのが見える。その人々の正体とは。「何だあの人達は!悪魔の襲撃か
月の民殲滅戦から2年。私は16歳になった。ちょうど超日食(ノヴァ・エクリプス)によって悪魔が出現する数日前だった。相変わらずシルフは納税の取り立てにより、国民の生活は苦しくなっていた。そして超月食が起こる20日ほど前、王の側近である宰相のハイド・スペクターが外出していた時があった。理由は聞かされていないが、私はこの時に王と話をする為に王室の扉まで来ていた。全ては、あのハイドが来てからおかしくなった。だから、少しでも話をしてみたい。しかし、私は扉の前に立っていた魔導兵の人達に止められた。「王に会わせて下さい!話があるんです!」「ダメです。いくらフィナさんの命令でもここは通すなと